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18/04/10 絵本二題 / ポショワール彩色のエディー・ルグラン著『MACAO ET COSMAGE』と震災1ヵ月で発行した村山知義他『『東京ノ地震ト火事』

■先週水曜日頃からぐずぐずしていた体調不良により、土曜日未明の更新をしないまま7日は臨時休業してしまいました。万一ご来店下さった方がいらっしゃいましたら伏してお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。
加えて、今週も営業日程に変動が。
市場のスケジュールの関係で、今週店は10日(火)と14日(土)のみの営業とさせていただきますます。両日とも12時より20時までと、営業時間はいつも通り
色々とご不便・ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご海容を賜りますよう、ご来店時にはご注意いただけますようお願い申し上げます。
お陰様で体調の方は元気を取り戻しました。ご心配をおかけし大変申し訳ございませんでした。併せてお詫び申し上げる次第です。

巻頭序文が「子どもたちに」で始まる『MACAO ET COSMAGE(マカオとコスマージュ)』については、日本語で読めるデータが非常に少なく、ほとんど唯一ヒットしたのが、イラストレーターのたむらしげるさんののツイッターで、「25年ほど前、初めて購入した洋古書絵本」と書いておられます。  

34.5cm角と云う大判で、表紙・見返し含め全56Pポショワールという贅沢なこの絵本、小店にとっても初見で初入荷となりました。刊行は1919年。ポショワールの技法は確かなもので、また、時代的にはアール・ヌーヴォーからアール・デコへの移行期にあたり、いまだヌーヴォーに傾いてはいるものの、とくに構図や単純化したデザインの一部にはデコの兆しも認められます。
物語はごくシンプルで、都市化・観光地化がもたらす自然破壊の風刺物語。白人男性と黒人女性が幸せに暮らしていた静かな島を舞台に、1隻の船がやってきてから急速に変化していく様を描き出します。高いビルが立ち並び、工場の煙突が真っ黒な煙を吐き出す描写など、フランス・マゼレールの作風とよく似たところも散見されますが、どこかバンド・デシネを思わせるコミカルで洒脱な絵は、ストーリーを的確かつ印象的に伝えてくれます。
作者であるエディー・ルグランの名前は、岩波文庫で絵入りで翻訳が出ているアナトール・フランスの『少年少女』のイラストレートターとして知られる他、澁澤龍彦が『世紀末画廊』で本当に僅かに言及している以外、これまた日本語で読めるデータはほとんどありません。
下記のサイトによればルグランは1892年にボルドーで生まれたイラストレーター・画家。広告用のイラストと本の挿絵でキャリアをスタートした後、絵画にまで世界を広げますが、第二次世界大戦後は主にニューヨークを拠点に商業イラストレーターとして活躍しました。
http://www.askart.com/artist/Edouard_Edy_Legrand/11144021/Edouard_Edy_Legrand.aspx
『MACAO ET COSMAGE』は、彼の仕事の出発点に置かれる本であり、子供向けに出版されたものだけに現存するものは非常に少ないらしく、2000年には復刻版が刊行されています。稀本。

■この本、最後に市場で見たのがすでに4~5年は昔のこと、私の記憶にあるなかでは3度目の入札でようやく落手できました。小店としては非常に珍しく、上に続いてこちらもまた絵本となりました。『子供之友』シリーズの1冊で、村山知義・武井武雄等作画『東京ノ地震ト火事(トウキヤウ ノ ヂシン ト クワジ)』

表紙・裏表紙含め全16P・2色刷。当時すでにカラー印刷を導入していた『子供之友』にあって全ページ2色刷を余儀なくされたのは、発行があの関東大震災から僅かにひと月後、10月1日だったという事情あってのこと。巻末に置かれた発行元・婦人之友社の「オシラセ」は次のように書きます …… “「子供之友」ノ十月号ガ チヤウド 印刷ガデキアガツテ コレカラ製本ヤニ”というところで地震による大火にあい、一冊残らず燃えてしまったこと、そのため、自分たちがすぐにまた全く新しい10月号の編集を始めたこと、1日も早く出そうとして苦心したこと。そして、出来上がったこの『子供之友』10月号が 子供之友カラ 皆サンヘ コンドノ東京ノ ヂシント火事ノ アリサマヲ オ知ラセスル オテガミ代リデス。”と。
震災から1ヵ月、簡素な絵本1冊を出す。一言で云えば簡単ですが、そこにこめられた思い、刊行までに払われた努力、乗り越えなければならなかった障害、やっつけとは思えない仕事の質等々、この1冊にどれだけの人たちのどれほどの思いが込められていることか! 見てくれば質素ではあるけれど思えば重たい、実に重たい1冊です。
画像では全て村山知義作画のページをとりましたが、武井武雄作画が2点、作者不詳の1点が含まれており、詳細については図録『村山知義の宇宙』(2012年神奈川近美・世田美他)171Pなどをご参照いただくのが確かであろうと思います。
村山知義についてはもはや海外の古書愛好家によく知られる名前となりましたが、この本についてもかつてアメリカの蒐集家の方から問い合わせをいただいて驚いたことがあります。さてこの1冊、果たして日本に残るでしょうか …… ???

今週はこの他、鳥居昌三旧蔵の詩集と限定本を一口ずつ明治時代の建築関係雛形を十数冊たばこ・マッチ等戦前ラベルの貼込帖2冊日本画・書道関係の道具・備品数点が10日には店に入ります。
画像3点目は北園克衛旧蔵の後、鳥居昌三旧蔵を経て小店架蔵となった北園克衛宛・植草甚一署名日付カット入り『映画だけしか頭になかった』の初版本。本を-しかも戦後の本を-買ったのは本当に久しぶりのことです。



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