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18/04/21 上海風俗と映画論とメトロポリス+たまには本 !

■先週は市場続きの合間にあちこち動き作業続きでもって金曜夜には疲労困憊。PC立ち上げるのも億劫でお断りもしないまま当ページの更新を1回パスしてしまいました。どうかお赦し下さい。
只今、市場出品に向けて仕分け途上の商品がお三方様分。全て一旦店に運び込んで作業をしているため、店内立ち入りが憚られるような状態ですが、来週も火・木・土曜日は平常(を装って)営業いたします。御用の方はご遠慮なくご入店いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。

さて、早いもので今年もそろそろGWのスケジュールのお知らせを。店は4月29日(日)から5月7日(月)までお休みをいただく予定です。その間、ジェオグラフィカさんや市場など、実はウロウロしていないといけない用件もあり、突発的に店に立ち寄る日やジェオグラフィカさんに居る日など、決まりましたら随時Facebookでお知らせいたします。この間の動きやご連絡についてはFacebook経由でお願いできればと存じます。併せてよろしくお願い申し上げます。 

■先週、市場と作業の間隙を縫って「吉田謙吉写真展 満洲風俗・1934年」を観てきました。「考現学」で知られる吉田謙吉さんです。ライカのレンズ越しに注がれた視線の向こうには、路上で働く人たちの姿があり、女性のファッションがあり、店の看板があり、駅のホームの雑踏があり、つまりはユニークでユーモラスで温かくて、でも静かに時代の本質を突くかのような考現学の、その満洲版と云えるものではないかと思いました。スナップ写真は先ず第一に、写す人のありかたを写すものであるようです。
昭和5年に初版が発行された『上海風俗』の昭和6(1931)年発行・第三版が入荷しました。第3版まで出ている割には見ない本だと思います。
これもまた旧植民地に関する写真集としては珍しく、戦時色・支配者的視点より都市風俗・時代観察者的視点に比重を置いている感の強い ― 社会的に虐げられている人たちなど対象によっては心を寄せるかのようなコメントまで見られる ― この時代にしては異色のものではないかと思います。
巻頭、「自由都市の名に恥じない上海の、巡警の種類の多いのも又上海でなくては見られ得ぬ、名物の一つであらう」として、英仏日支印他各国制服姿の警官の写真に始まり、苦力の諸相、路上の物売り、一輪車の絶妙な使い方、「開放を叫び、法律的に男女同権を認められるるに到った、新支那の女性は、たしかに日本女性の一段上を行くの観がある」との文言が添えられた上海モガの写真を集めたページ、上海名物(?)阿片窟、市場の様子を写した毛物衣類のセリ買、「グロテスクの一語に尽きる」と言い切っている纏足によって変形した足の写真など、他ではあまり見られない画像が、上海のもつ明るい部分と暗部のバランスもよく、収録されています。
撮影者である佐藤成夫という人、版元である長澤写真館については、両者によって『大上海』という写真集が出版されているということ以外、残念ながらいまのところ情報が見当たりません。年々窮屈になっていった日本を離れ、自由の空気を求めて上海に渡った日本人の多くは、敗戦と植民地時代の終焉とともに、その足跡をも消し去られてしまったのでしょうか。 

特撮SF映画の嚆矢とされるフリッツ・ラング監督「メトロポリス」の日本封切りは?と調べてみると、1929(昭和4)年。アメリカでの封切りから約3年後ということになりますが、例えば雑誌『映潮』昭和2(1927)年10月号 = ほぼ1冊まるまる山村冷笑による映画論集で構成された特別号の巻頭、「機械美賛美」の代表例として「メトロポリス」のスチール写真がとられているのを見るまでもなく、日本には封切り以前からすでに相当量の情報が入っていたと見て間違いありません。
雑誌『映潮』は大竹二郎、河本正男、長濱一郎、清水政二などを同人として出版されていた雑誌。いずれもアマチュアとして映画に関心をもちつつ、当誌以外にも小論を寄せたりしていたようですが、村山執筆による当号掲載映画論については、下記のサイトでその重要性が指摘されています。
http://w01.tp1.jp/~a920031141/oginoshigeji.html
画像中、縦組みで「メトロポリス」と映画ポスター独特の書体の文字組が目をひく紙モノはと云えば、信州長野の「春秋映画観賞会」主催による映画「メトロポリス」上映会の小型ポスター
封切館であった松竹座で上映された後、その評判により地方でも上映されていったのであろうこと物語る物件であり、長野と信濃の有力新聞社や文芸協会等が後援していることから、鳴り物入りの上映会で規模もそこそこ大きかったのだろうと推測されます。
ごく薄い紙を使い、スミ一色で印刷された至って質素なものですが、それだけに残存部数は相当に少ない、と云うより、このようにほぼ完ぺきな状態で現在まで残ったこと自体、まずあり得ないだろうと思われる希少品です。

■久しぶりに落札した書籍を少し。全て鳥居昌三旧蔵書。画像左端より時計回りに……
『パンツの神様』 藤富保男著 1979年 初版 鳥居昌三手製箱・著者自筆ハガキ付 署名識語入 エッセイ集
『詩集 時間の表情』 楢山芙二夫著 VOU発行 発行人・北園克衛 1975年 限定194部 献呈署名入 著者自筆メッセージ1枚付
『硬化するゼロ ソネット30』 大洲アキト著 1966年 限定200部 署名・日付入 鳥居昭三手製箱・ハガキ付
『詩集 乾いた種子』 西卓(VOU8人集のひとり) 1958年 献呈署名入 ハガキ付 笹岡信彦装丁、
ここに挙げたのはとくに装丁に惹かれたものですが、この他、加藤郁乎と瀧口修造『掌中破片』藤富署名入『カミングス詩集』、金子光晴『鮫』、望月通陽手紙付『ミラクル』など14冊、少なくとも来週より店頭に ……… 出したい。出したいのはやまやまだが! さあ!! どうなる!!!

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