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21/12/25 2021年の〆に 久しぶりにデザインとプロパガンダの資料が揃いました!

■M!DOR!さんのお店番イヴェントでは、多くのお客様にご来店いただき、本当に有難うございました。一気に花が開いたような二日間の後には、あっという間にまた地味な古本古紙屋に戻っております。
年内の店の営業も残すところ12月25日(土)と28日(火)のみとなりました。
「それ、いまですか?」とは思いつつも、この両日はご予約なしとさせていただきます(誠に恐縮に存じますが不織布マスクの着用をお願いいたします)。新年向きの木版刷りの吉祥図案などもご用意して ご来店をお待ちいたしております。何卒よろしくお願い申し上げます。
表参道の交差点にはカルティエのクリスマス・ディスプレイが登場。今週1点目の画像は"映えスポット"(?)として人気を集めた2021年のXmas風景です。

Merry Xmas!!!のご挨拶とともに新着品のご紹介。2021年もこれでお仕舞い。
1点目はグラフィク・デザインに関係していた人が資料として蒐集したとみられる素材をあつめたスクラップ帖。出品されていた状況から、旧蔵者は東京府立工芸学校で学んだ関根芳男という人ではないかと推察しています。
蒐集した素材は、戦中から概ね敗戦直後の1940~50年代初期までの印刷物で、僅かながらデザイン原画が含まれます
対象となったのは新聞の突き出し広告からパンフレット、リーフレット、DM、パッケージデザインまで多岐にわたりますが、集めた人のセンスの良さによって、非常に珍しい紙モノが多数含まれているのがミソ。
その筆頭が画像のなかにもある日本工房の『NIPPON』の日英併記の出版案内。余程気になったのか、2種類各2点ずつ、それぞれ見える面を変えて貼り付けています。 

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*所有者以外による画像の転載、複製、改変等はこれを固く禁止じます。

また、力強いタイポクラフィでひときわ目をひく「MEIJI」というのは戦前、主に洋雑誌の取次で力のあった「明治書房」の商品目録。この冊子は2010年に一度扱って以来、目にしたのはこれでまだ2度目。冊子に関する詳細は、最初に入手した際に詳しく紹介した記事がありますので下にアドレスを貼っておきます。デザインは金丸重嶺だったらしい。因みにこの時は落札直後にドイツの同業者に拉致されて海を渡っていきました。参考資料として手元に残しておくべきだったと後悔したのを覚えています。
http://www.nichigetu-do.com/navi/info/detail.php?id=497
この他、スモカの新聞広告、キングタバコの小型ポスター、ヤマサ醤油の変形チラシ、サクマ式ミルクチョコレートのパッケージ同型色刷チラシ、おこさまがたの出世保険案内、ニッケメリヤス変形広告、森永チョコレートのポップアップカード、資生堂化粧品デーの広告切り抜きといった戦前のものから、アメリカ製ハーシーチョコレートやチクレットのパッケージ等、敗戦直後に日本に入ってきたものなど、目立ったものだけでも枚挙の暇がありません。あまたあるスクラップ帖中の白眉、とまではいかないまでも、トップクラスに近い内容だと思います。
4冊一括での落札だったのですが、とりあえず持ち帰った1冊だけでもこの調子。他の3冊も遜色ない印象だったので、ほぼ同等の内容はあるのではないかと思います。
細かい点は25日の入荷後に確認しますが、当面は一括での販売を考えております。

■新着品2点目は今年8月末に落札してからというもの、可能な範囲で資料にあたってみたものの、最終的に詰めきることができなかった戦中写真の一群です。
旧蔵者は高名な研究者で、有難いことに手書きのメモがついていました。
入札時に添付されていたそのメモ書きによれば、「山端瑞玉の主宰する写真通信社G.T.SUN(海軍参謀本部の特約機関)の山端写真研究所の記録庫にあった写真資料」。B5前後のサイズで17枚あり、この内の2枚の裏面には、確かに「山端写真科学研究所 大東亜写真文庫」のスタンプもあります。
メモによれば、1941年秋の豊後水道沖・海軍大演習の記録が多く、この時期、『FRONT 海軍号』を準備中だった「東方社の木村伊兵衛らのカメラマンが演習等に従軍して撮影」したと云います。メモでは他に坂口任弘、中央工房の光墨弘の名前を挙げています。 

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*所有者以外による画像の転載、複製、改変等はこれを固く禁止じます。

メモではまた、こうした写真は「山端写真科学研究所(写真通信社G.T.SUN)でネガの現像プリント引きのばしを行い、海軍省の検閲を受けるシステム」下に置かれており、17枚中の1枚に残されている白帯部分は検閲によって伏せられた部分だと指摘、「この種のプリントはめったに市場に現れない」と結んでいます。
大筋のところは多川精一の著書『戦争のグラフィズム-回想の「FRONT」』とも一致しており、素直に読むと①木村伊兵衛が撮影した写真が含まれているか、②東方社の『FRONT』のいずれかの号に使われている写真か、といった可能性を伺わるものでした。
ところが。復刻版FRONTで全号にあたるも17枚の写真と部分的にでも一致するような痕跡は皆無。従って、"FRONTに掲載されている木村伊兵衛撮影のオリジナル写真プリント!"として(←FRONTか木村かどちらかひとつでも良かったのに)売ろうという夢はこれで潰えました。
それでもまだ、木村撮影の写真の有無については断じることはできません。
メモにはまた、「これらの写真は海軍省出版物につかわれた」と書かれており、この点を確かめるには、海軍省或いは海軍省に関係して発行された膨大な数の刊行物にあたるのか? と、眼前の壁のあまりの厚さにしばし呆然としましたが、デジタル時代を生きる古本屋にはまだうつ手が残されているではないか!というわけで次にやってみたのが"片っ端から画像検索してみる"ことでした。
画像検索によって2点の写真と合致するデータを発見。さすがは21世紀!
ひとつは「laststandonzombieisland」というブログ。船上での武道練習を写した「巡洋艦 柔剣道」という写真がまるまるそのまま使われています
https://laststandonzombieisland.com/2014/11/25/martial-arts-on-japanese-warships/?hcb=1
もうひとつが「現代ビジネス」というサイトに掲出されている下記の記事。こちらは写真プリントでは「カッターの練習」と題された画像の一部を切り取り、「漕走するカッター。「名取」沈没後はこの小さなカッターに1隻あたり60名もの生存者がひしめきながら、600キロ近くを漕ぎ切った」というキャプションが添えられており、少なくとも一度は何らかの媒体に意図的に利用されたもの-プロパガンダにはありがちな手法ですね-を引用した可能性を伺わせます。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68602?page=4
それでも木村は出てこない。どこにもひとつも出て来ない。何故だ!? どうする!
こうなると読んでるみなさんはむしろ、どうしてこうも東方社や木村伊兵衛に拘泥するのかと思われているかと拝察します。
何故か。実は画像中下左端の写真、「写真整理」と題されているのですが、木製の衝立に「写真課日課表」が貼り出されたこの写真中、向かって左の人物が木村伊兵衛によく似ているから。とすれば東方社がらみの資料か?というわけです。
実際、今泉武治は『FRONT』のための写真を選びにフォトサービスに出かけたことを日記に残しています(『復刻版FRONT』参考資料より)。
販売価格にこだわるあまり、ああでもないこうでもないといじくりまわした約4ヶ月でしたがここでギブアップ。2022年に持ち越すことはせず、売りに出すことにしたいと思います。
旧蔵者のメモから繰り返すと、この手の写真が市場に出てくるのは非常に稀。それだけは保証いたします。

※付記 写真プリント17枚中16枚に裏面にタイトルと整理番号の書き入れがあります。
また、山端写真科学研究所は写真家・山端祥玉が経営していたジーチーサン商会を1943年に改称したもの。

サンタが日本に到着したのと丁度同じ頃、東京の南部では雨が降り出しました。サンタさん、今年はちょっとお気の毒でした。
明日からの寒波到来でとくに日本海側では大雪に対する警戒が呼びかけられています。太平洋側でも積雪の可能性が指摘されるなど、全国的に荒天が予想されています。オミクロン株の市中感染も各地で報告されるなど、2021年はなかなか安穏には過ぎていってくれないようです。
そうでなくとも何かと気忙しい年の瀬です。
どうかくれぐれも安全第一・健康一番で、良い年をお迎えください!
2021年は本当に有難うございました。
新年初売りは1月8日(土)とさせていただきます。
明くる年も何卒よろしくお願い申し上げます。 

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