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21/12/04 ストックより救い出した高橋昭八郎の2冊の本


■やるべきことがちっともできていないわりに一体その分何をしてたのか自分でもさっぱり分からないまま時間は過ぎて、2021年も気が付けば12月です。12月だなんて!
昨年は中止となった表参道のイルミネーションも今年再開。エリアは表参道の交差点から神宮橋交差点、期間は12月26日まで。
オミクロン株といういまだ正体のつかめない変異株の拡大が懸念される中ではありますが、約1キロにわたって輝く道を - 少し急ぎ足で - 私も今年は歩いておこうと思っています。

今週の新着品は年内に目録化できなかった戦後の美術・デザイン関係刊行物のストックにまわっていた分より救い出した、高橋昭八郎の私刊本『ポエムアニメーション』シリーズの2冊
高橋昭八郎は1957年に北園克衛が主宰したVOUクラブの同人となり、以後、とくに視覚詩=ヴィジュアル・ポエトリーや立体詩に傾注した詩人で、生誕地・岩手にあった1960年代後半からイタリアやドイツ、オランダなど海外の斯界にも知られるようになった人物です。
現在小店店主の手元にあるのは、シリーズの2に位置付けられている『風』と3の『影』。
『風』は1968(昭和43)年3月制作・限定120部。10×10cmの枡形で表紙を含め全24P。背の厚みは1.5cmほど。
一般的な書籍と同様に、表紙からページを繰っていくことができますが、実はこれが両面印刷した紙を輪っか状につなげたもので、外側だけでなく内側にもテキストが印刷されているという代物。輪の全長が40cm強、従って印刷面としては両面約480cmに及ぼうかという実験的な作品です。
表側は主に漢字や漢字の一部を使い自在に組版したり、罫線や記号などで構成したり、抽象的な表現だけで展開。内側は日本の辞書にある「風」を説明した文と、英語辞典から引用した風に関連する英単語と日本語訳とを引用。こちらの面では、三角形に成形したり天地ぎりぎりに置いたり、組版への工夫とごだわりが見て取れます。
開いてみると分かるのですが、厄介なほどに長い紙をなのに、折りたたみはじめるとするすると10cm四方に収まってしまうさまはちょっとした驚異です。
高橋昭八郎という人の紙細工志向とでもいうべき探求は次の『影』では一層拍車がかかることになります。
 

■その『影』の方は『風』制作から7ヶ月後の1968(昭和43)年10月制作で、こちらは限定300部。限定部数の増加は、下記の海外での展覧会とも関係がありそうです。
こちらも10×10cm、厚さ2cmと一見コンパクトなつくりですが、完全に開けば縦70cm×横50cmの1枚の紙に、大きくはわずかに6ヶ所の切込みを入れて畳んだだけという驚きの設計。あまりの複雑さに一度開くと二度と元に戻せないのではないかという恐怖にかられ、開くのにはそれなりの勇気がいりました。ははは (いまは習得)。
「影」という漢字を主たるモチーフとして、漢字を構成するパーツをモチーフにしたり、対意語である「光」という漢字を使ったり、「月」の造形を引用するなど、『風』より多くの要素を加え、つくりは飛躍的に複雑になっています。
ページ順でみていると両面スミと赤の2色印刷してあるかのようにみえますが、完全に開くと片面ずつスミと赤の1色刷でできていることが分かります。
それを可能にしているのが、切り目の入れ方と折り方。一体どのうよにして編み出したのか、これまた驚異的な1冊です。

北園克衛とその周辺人士の研究で知られる金澤一志氏による年譜によれば、『風』は1968年"モデナ(イタリア)で開かれた第2回アヴァンギャルド「壁にかかれた文字」展に出品"、同じく1968年、"「影」がフェララ(イタリア)で開かれた「KM149000000」展に招待出品"されたとあります。
下記のアドレスで金澤氏の年譜をご覧いただければ分かるように、高橋昭八郎に対する評価は、少なくとも2003年当時まで一貫して海外の方が各段に高いことが分かります。
http://www.mars.dti.ne.jp/~4-kama/sho8ro/nempu.html
限定数からして決して多いとはいえず、また、一定数は疾うに海外に出ているであろうことから、小店などにはそうそう入ってきそうもない2冊です。

■コロナ禍も一息ついたかと思いきや、今度はオミクロン株だと云うし、昨日は山梨と和歌山が揺れるしで、不安がつのる12月のスタートとなりました。
そんな今週の斜め読みから。

どうやって自助せよと?
https://mobile.twitter.com/9ep5eMOJVCpa9iL/status/1465508664089874440?t=lkV21sXdVZPOJghLt7_OXA&s=04&fbclid=IwAR2nGP876zqFviOgybhrDhn0RC7a0Dbp5UoWgbY_J0o2NWpU2tsPDfhB1Ec
オリンピックのツケは?
https://mobile.twitter.com/tanutinn/status/1465439520195706882?t=czQpPOhAMMHan55_5Zsn1w&s=04&fbclid=IwAR0yks7_OnObViunQntrP9zbLDTOYrDoBMHAqwcqoz9OQ0XZwBvH6BN8pgM
それでも陽気なこの人とそのお友達。
https://www.facebook.com/akihiro.nishizawa.5/posts/4259265624177709?__cft__[0]=AZUNRXRnrS6gBHgK9Z62frikI7CN_fL-WCmQqCvBOtcOMMlUg7B1O-Kg8cR7rXCGgrSiCanzyRmbvB1S2A8ytYJ-A4axIqBJVVobGY8pEiFiwlQDPsyfqYGiUXQAd8i0-pEiDnxeL_lzUQoq7Pes9UqVWK6niIsGuvPRDeV8jryrOQ&__tn__=-UK-R 

 

21/11/27 待望の再入荷2点! ドイツの高級石鹸・香水のカタログ!! プランタン百貨店&ブルネレスキのアジャンダ!!!


■26年目の最初の新着品更新のお約束を反故にして結局1回お休みした格好になってしまいました。先が思いやられるというものです。すみません。
引き続き25周年週間中ですが、明日27日(土)は所用のため、店の開店は夕方以降となります。
戻りの時間についてはFacebookまたはInstagramよりDMを頂戴できればご返信いたします。また、閉店時間は1~2時間延長いたします。
来週は火・木・土曜日のそれぞれ12時より19時で営業いたします。
ご不便をおかけし誠に恐縮ではございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
一週間も放っといたんだからとっとと新着品をやりなさいよ。とどこからか聞こえてまいりました。はいはい分かりました。というわけで今週の新着品のご案内です。

■今週の2点はどちらも小店にとっては再入荷、かつてお求め下さったお客さまのご蔵書の整理にあたり、小店たってのお願いで買い戻させていただいた商品です。
1点目は『MUSTERBUCH DER FIRMA M.KAPPUS』=カプス社の製品ブック(カタログ)。カプス社は1848年にヨハン・マーティン・カプスによって創立された高級石鹸と香水メーカーで、第一次大戦、大恐慌、そしてワイマール共和国当時のハイパーインフレ、さらには第二次世界大戦のドイツ敗戦と怒涛の歴史をみごと乗り越え、2021年現在、石鹸・衛生商品分野でドイツのリーディング・カンパニーとなっています。
今回再入荷したこのカタログには、年記がないのが惜しまれますが、いまはカプス社が製造から撤退した香水類が多数掲載されていること、その商標のデザインや印刷技術の点などからみて、20世紀初頭~第一次世界大戦以前のものではないかと推測しています。
カタログノサイズは約33×25cmとやや大ぶりで石鹸や香水瓶など原寸サイズで収録されているものとみられます。商品は36Pにわたってびっしり並べられており、全ページカラーリトグラフ。さらに。カートン売りの箱のラベルや香水瓶のラベルの全ては別印刷された商標印刷物そのものを瓶のサイズに合わせてカット、それを貼り付けるという、とんでもなく贅沢かつ丁寧につくられたカタログです。
とくに香水の商標ラベルは金色や細部までよく出来ているエンボス加工の小花柄など、いまとなっては特別に手がこんでいて再現不能と思われるもの多数。エンボス好きなら思わず撫でさすりたくなること請け合い。瓶のデザインにも見るべきところ多く、デザインの宝庫てす。

最初にお求めいただいたのはいまから15~16年ほど前のことだったかと思うのですが、当時の小店店主、この手のものはまだまだ出てくるだろうなんて高を括っていたのですが、しかし、今日に至るまで、この1冊以外まだ見たことがないという希少品です。
ついつい絢爛豪華な香水に目を奪われがちですが、何だか美味しそうな黄色い石鹸や、銀色の包装紙に包まれた石鹸がきれいに並ぶページも魅力的。
石鹸は、グリセリン石鹸、ココナツ石鹸、アーモンド石鹸、脂肪石鹸、トイレ用石鹸、医療用石鹸、特製品など7品目128種、すべてデザイン・パッケージ等の異なるお品物を取り揃えてカタログに掲載いたしました by 2代目(←おそらく)カプス。
他にもこのレベルのカタログをもっている方がいらしたら是非小店まで。よろしくお願いいたします。

■こちらもまた、十数年前にはまだこんなものが東京の市場やパリの古本屋に転がっていたのかと感慨深い再入荷2点目。彼の地で仕入れてきたパりの百貨店プランタンのアジャンダで1922年版
アジャンダとは、パリのボン・マルシェ-世界最古の百貨店-の発案でつくられた、もとは家計簿をかねた年間のスケジュール手帖で、後に百貨店やヘアサロンの組合、さらに自動車メーカーなどがまで年末にきそって発行したというフランスで流行した人気ノベルティ、オリジナル商品です。
1922年、プランタンのアジャンダはご覧の通りの中国趣味=シノワズリのテイスト見事にまとめあげたのが小店お客さまならご存知のブルネレスキその人。
ブルネレスキについては挿絵本の作品、次いでファッション・プレートの仕事が知られているのではないかと思いますが、むしろ東洋趣味の印刷物のデザイン(例えば楽譜の表紙絵など)に惹かれます。
このアジャンダでは2色刷の扉、フルカラー印刷の別丁口絵、テキストに添えられた挿画はもとより、365日の日記全ページのヘッド部分に置かれているカット、その全てをブルネレスキが手掛けています。さすがに365種とはいきませんが、日記部分のカットだけで50パターンはあろうかという大車輪でのお仕事ぶり。
もう1冊、1930年用のボン・マルシェのアジャンダというのが実はシャルル・マルタンが1冊全部を引き受けており、こちらも小店にとっては忘れ難い商品のひとつ(『パリ 日本人の心象地図』の巻頭口絵頁に表紙が掲載されています)。
この2冊を並べただけでも、20世紀はじめ、アジャンダがいかに重要なブランディング・ツールだったかよく分かるので、いつかマルタンのアジャンダとも再会したいものではありますがさて…。

コロナによる規制が緩和され、地下鉄はもうすっかり以前の混み方まで回復しました。還暦の店主は25年前には考えられなかったタブレットなんてものを持って地下鉄に揺られながら世界のいまを斜め読みしています。今週は例えばこんなものを。

安全保障の基本は食糧自給率にあり。
https://www.news-postseven.com/archives/20211108_1704663.html?DETAIL&fbclid=IwAR2k48Maq2IBz0xiI67XfVBKDrksln4sDHZ2FO5BZ9u_cofLrXEeDS-MY88
金貸しと、在日と、蔑むなかれ。
https://globe.asahi.com/article/14481843?fbclid=IwAR3m7c6L9meV-RgLJ7zVrBlmkcjJFcoBFvVzifeTjal7MaZgd6uMKcGvKRU
アベノミクスの失敗を未だに云えないのは何故なんだろう。
https://mobile.twitter.com/yukionoguchi10/status/1461078822237868039?t=qroZQT0KwMvgzVTKCDx6ZQ&s=04&fbclid=IwAR21p4rDhcpyEpsqIP_PPNhbF_8yCJs_stswsXO0lBCZQ2mAzEVmaxmGdUY
待つのは自助の崩壊、共助の不在、そして公助という名の冷酷。
https://www.asahi.com/articles/ASPC87KGYPC8UTFL004.html?fbclid=IwAR1g2YCmDPju880GOC7seX4lCQEO6wYUzjxE2ei5efL1jnhugYU-imvTXww
いやはや我々世代の老後やいかに ……
 

 

21/11/20 25周年では有難うございました!更新は月曜日に!


◼️25周年にあたっては、思いがけず多くのみなさまから祝福を賜り、感激が続いております。小店を大切に思って下さる方が、まさかこんなにあろうとは……!有難さを噛み締めた一週間でした。
本当に有難うございました。
なんてことを云いながら、周年のその日に店を閉めたままで迎えるなど、すでに太々しい古本屋にならんとする日月堂でありますが、26年目もまた、どうぞよろしくお願い申し上げます。
とお願いする舌も乾かぬうちになにかとは存じますが、新着品のご案内は月曜日とさせていただきます ……………………… あ、あ、あしからずっ!!!

◼️来週は火曜、木曜、それぞれ12時より19時まで営業いたします。27日の土曜日は所用のため夕方からの営業となります。併せて悪しからずご了解を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

 

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